回答:
解説
ドアの防音施工をしたい
玄関ドアを通じて、アパートの階段を昇り降りしたり、廊下を歩く音が部屋に入ってくるので、困っている方は少なくないでしょう。
分譲用のマンションと比べ、アパートやシングル用マンションは、販売価格帯を押さえるため、様々な造りが簡素化されています。
入居後に、廊下からの音がドアを通じて大きく聞こえると気づいたとしても、すぐには引っ越せません。
自分でできる防音対策はなるべくやって、暮らしのクオリティを上げたいものです。後付けで防音の効果が出るものはあるのでしょうか。
音を吸収するもの
騒音は、途中でさえぎってやれば小さくなりますので、部屋の内側に吸音素材をとりつけます。
音は、密度の高い素材にあたるとより吸収されるという特徴があります。ですので、空気を介して伝わってくる騒音は、単位面積当たりの重さが大きい素材が有効です。
効果がないもの
一方で、アパートの構造体であるコンクリートや鉄骨など固体中を伝わってくる騒音は、後付けの吸音素材では効果が望めません。
階段や廊下を歩く音は、コンクリートを伝わってくる部分もあります。これは後付けで防ぐのは相当に困難ですので、そこは割り切りがいります。
また、防音素材を取り付けたときに隙間が残ると、効果が見込めません。ですので、ドアとドア枠の隙間をふさぐほうが先です。
例えば、目覚まし時計がけたたましく鳴った時、うるさいので寝ぼけたまま毛布や掛布団でくるんでみた経験のある人はいるでしょうか。
掛布団を上からかけたぐらいでは、音はたいして減りません。毛布でくるんで、さらに掛布団で隙間をなくして、それでようやく音は小さくなったはずです。
防音素材をとりつけるときは、音源を密閉するくらいの気持ちで作業をしないと、思ったほど効果が得られないということになります。
防音効果のある素材
三種類の効果がある素材を紹介します。どのくらい騒音対策が必要か、かけられるコストを考えて選ぶと良いでしょう。
騒音レベルは、一般的にdB(デシベル)という単位で表します。表中の性能もdB単位で、デシベルの数値がどのくらい下がるかを示します。
目安として、-6dBで音量が半分、-10dBで3分の1、-20dBで10分の1です。(騒音の感じ方は低高音での差、個人差があります)
通称 | 素材 | 性能(子供の声の遮音) | 価格(単位面積あたり |
---|---|---|---|
消音ウレタンフォーム | スポンジ | -5~-30dB (品種、厚みにより幅がある) |
× |
遮音カーテン | 布 | -5~-10 dB | △ |
防音シート | 樹脂のシート | -10~-20dB | ○ |
消音ウレタンフォーム
ウレタンフォームというのは、ウレタン樹脂を発泡させて、空気を多く含ませたスポンジです。空気が閉じ込められ、表裏で貫通しないので、音の伝わりを遮る効果があります。
一般にはなじみがありませんが、一軒家の断熱処理では、発泡させたウレタン樹脂を部屋の外に吹き付けて断熱効果を得る、ということは普通にされています。
性能は-5~-30 dBです。一番左の対策なしを基準に、ウレタンフォームの厚みを増やした時の数値との差を見ます。
引用元: ミスミカタログ
ウレタン樹脂は軽いため、はじめの方で述べた、密度の高い素材が好ましい、という条件に合致するためには厚みを稼ぎます。厚みがないと、遮音効果は望めません。
メリットは、固形物なのでドアの内側など、平面に直に張り付けるのが容易という点です。
その代わり、固形物なので材料代が高く、販売単価は高めです。
遮音カーテン
カーテン売り場で手に入る遮光カーテンは、遮音の効果もうたっています。
遮光のため、布の網目を細かくしたり、何層にも重ねて直進光が通りにくくしたり、樹脂コーティングをして光を遮ったりする造りは、そのまま空気の振動で伝わる音を通りにくくする効果につながります。
性能は、子どもの声の周波数(1k~2kHz)で-5~-10 dBです。
引用元: ニトリ公式通販 ニトリネット
メリットは、開閉ができるので通行の妨げにならない点です。柄や風合いを自由に選べるため、部屋の雰囲気も損ないません。もとがカーテンなので、吊るすのも簡単です。
その一方、吊るすだけでは床面や柱との間にすきまが開きやすく、騒音が侵入しやすいデメリットもあります。
隙間がのこらないよう、床までつくようにたらすど、施工には工夫が必要です。
防音シート
ビルの工事現場で、周囲が風にはためくシートにおおわれているのを見たことはありますか。
建築工事現場では、近隣に住んだり通ったりする人への騒音対策が必須です。そこで建築業界で使われているのが、防音シートです。
工事現場で組んだパイプやぐらに、防音シートをすきまなく結びつけて、工事作業の音がまともに漏れないようにして使います。
性能は、子どもの声の周波数(1k~2kHz)で-10~-20 dBです。
引用元: 日本セイフティー株式会社
メリットは、もともと工事現場ですきまなく敷き詰めるためのものなので、屋内でもすきまをあけずに施工しやすいところです。基本的にはやぐらや枠をしっかりと作ってくくりつける方法に向いています。ドアの開口部につけ、通行の妨げにならないようにするには工夫がいります。
その一方で、外観は一般家庭にはそぐわないところがあります。この手の工事用仮設材は、近隣の方に「騒音に配慮していますよ」ということをアピールするため、シートの外観にわざと「防音」というプリントをしています。
業務用ということで性能には見るべきところはありますが、使い勝手、見た目ともに、ドアに使うには厳しいですね。
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