ディアウォールで壁掛けテレビの転倒を防ぐには何インチまでなら大丈夫?

ディアウォールで壁掛けテレビの転倒を防ぐには何インチまでなら大丈夫?

重量が20kg程度の50インチクラスまでは、ディアウォールで柱を普通に作れば倒れる可能性は小さいです。重量が30kg程度の60インチクラスになると、テレビを壁際にぴったりつけて設置しないと倒れやすくなります。

解説

液晶テレビや有機ELテレビは薄型ですので、壁掛けテレビにしている方も増えてきています。

しかし、賃貸やマンション住まいの方は壁に穴をあけるわけにもいかず、壁際に柱を立ててテレビ掛けを固定する方法が有望です。

ディアウォールを使って、テレビをフックで壁掛けにする場合、

50インチクラスでも20kg程度、60インチクラスになれば30kg弱に達するものが倒れたら困ります、恐ろしくて考えたくもないですね。

テレビの重量で家庭内事故にならないか心配です。そこで、構造計算を基に安定する設置範囲を一覧にし、倒れ防止の対策をあわせて説明します。

薄型テレビを柱に掛ける

市販テレビ用の壁掛けアームは十分に重量に耐えますので、そこは無視できます。

一方で、2×4材を床と天井に突っ張って、横板をつけてテレビ掛け金具を固定する場合、テレビの重みで突っ張ったところが滑る力、つまり倒れる力がかかる可能性があります。

まず、50インチのテレビの重量を20kgとし、フックの出っ張る長さと固定部の高さをいろいろと変化させて、倒壊させようとする力を計算してみます。

計算の根拠

2×4材を突っ張る天井高さは2,400mmとします。張り出し長は、フック固定部からテレビを掛けるところまでの直線距離です。横板のたわみは計算上は無視します。

倒壊する力はどこまで耐えれば良いかを考えるにあたり、

ディアウォール一本で突っ張る力→10kg

ディアウォールと天井の摩擦係数→0.5

とし、10kg×0.5=5kg (49N; ニュートン)の摩擦力を計算上の限界とします。

計算に用いた構造計算の詳細式は省略しますが、得られた計算値は、以下の図のように柱の任意の場所に重いものを取り付け、それによりたわむ状態と発生する力を求めたものです。

50インチテレビの試算結果

表の中の単位はNです。

フックの張り出し長さ フックの床からの位置600mm 1,200mm 1,800mm
SPF 2×4 100mm 9.1 12.2 9.1
300mm 27.5 36.7 27.5
500mm 45.9 61.2 45.9

ここでは49Nが計算上の限界です。その点でみると、天井、床からいずれも遠い、中間高さ1,200mmの位置に、オーバーハング状態のフック張り出し長500mmでテレビを掛けると61.2となり、49Nは超えて倒れやすくなります。

床から1,200mm→1.2メートルですから、普通に作ってしまいそうな高さですね。

実際は安全率を見ておく必要があり、半分の約24Nぐらいをボーダーラインとしたいところです。

そうすると、500mmも張り出すアーム型のテレビ掛け金具では倒れる恐れが出てきます。

実際はどうなのか

実際には、壁掛けの時に2×4材は2本以上立てて、テレビを支えると思います。

すると1本あたりの滑りの力は半分になります。

一方で、必ず10kg以上の力で突っ張れるとは保証できないこと、

天井とディアウォールの摩擦係数も0.5は理想的すぎるため、やはり上記の表程度の判断が安全です。

60インチテレビの試算結果

次に、テレビの重量が30kgであるときの試算です。

フックの張り出し長さ フックの床からの位置600mm 1,200mm 1,800mm
SPF 2×4 100mm 13.7 18.3 13.7
300mm 41.3 55.1 41.3
500mm 68.9 91.8 68.9

柱に対しぴったりと添わせる、100mmぐらいの出っ張りなら、倒壊の心配はほとんどありません。

300mmぐらい出っ張ると、値は最低でも41.3ですので余裕がなくなります。それ以上は倒壊しやすくなります。

横板の耐久性

壁掛けの金具をつけるとき、柱の間に横板を渡して、そこに取り付けることは多いと思います。

前半の計算では横板のたわみは一旦無視しました。

では、横板のたわみも見積もってみます。

横板にかかる重量を20kgとし、背板の中間にすべての重さが掛かったと計算上は仮定して、計算値を早見表にしました。

単位はmmです。

板厚 横幅600mm 横幅900mm 横幅1200mm 横幅1820mm
SPF
高さ89mm
1×4 (19mm) 0 0.2 0.6 2.1
2×4 (38mm) 0 0.1 0.3 1.1
SPF
高さ184mm
1×8 0 0 0 0.2
2×8 0 0 0 0.1

上記の表の応用として、背板の高さ(板の幅)を2割減らすと、たわみ量はおよそ2倍になる関係があります。

1820mm(6フィート)のSPF材の両端を固定する場合、20kgのテレビ重量に対し2×8や1×8などの大型の板を使えば、下向きのたわみは気にならない程度(1.1mm)におさえられます。

テレビ掛けの板への固定部、テレビの固定部の位置関係によっては、テレビの重量で横板が前にむかってたわむことも考えられます。

板厚があるか、板幅があるものを選ぶほうが良いです。

全体の注意点

上記の計算の条件として注意して欲しいのは、10kg以上の力で突っ張る前提です。

ディアウォールは施工の位置によっては、突っ張っても不安定になることはあります。

突っ張る天井と床には、下地があり頑丈な箇所を選び、安全な柱を立てるようにしてください。

突っ張る力に不安がある場合は、摩擦を増やす対策をしましょう。

転倒防止の対策

手ごろに行うには、部品についたすべり止めゴムの摩擦力を、さらに粘着シートで増やしてあげます。

使う粘着シートは、テレビの制震マットで大丈夫です。上下両方のキャップに張り付けて圧縮すると、水平方向の滑りをしっかりとと抑えてくれます。

大きな地震でもテレビが倒れるのを防ぐように、特に横向きの動きを止める効果が高いです。ぜひ試してみてください。

まとめ

ディアウォールの壁掛けテレビが倒れる原因を、柱からのはみ出し大小の観点で説明しました。倒れ防止の対策も記載しましたので、参考になればうれしいです。