ソーラーパネル発電の自作は、以下の手順で行います
- 使いたい電化製品を決めて、消費電力をざっくり見積もります
- 発電システムは持ち運び可能か据え置きかを決め、適したバッテリーの容量を見積もります
- バッテリーを満タンにできるソーラーパネルの発電量を決めます
- 機器を準備します
- これらの機器を順番に接続すればできあがりです

目次
はじめに
ソーラー発電システムは、ハウスメーカーが段取りをして、電力会社の電線と接続する申し込みを行うなど、とても素人が手を出せないように思えます。
しかし、電力会社の電線と接続しないオフグリッド太陽光発電システムであれば、素人でも少しの電気の知識とDIYのやる気で作れます。
近年、天災の発生がメディアをにぎわすことが増え、万が一の時の自家発電システムとしてもオフグリッドのソーラー発電システムは有効です。
迷いやすい、ソーラーパネル容量の決め方、ソーラーパネルの選び方、必要な部品のそろえ方、設置や配線方法を解説します。
電化製品の消費電力を見積もる
バッテリーの必要容量は、使いたい家電の消費電力から決めます。
お使いの家電には消費電力が表記されており、液晶テレビが150W (ワット)、洗濯機が500W、ノートパソコンが50Wなどとなっています。
150Wの液晶テレビを一日2時間動かすと想定して、計算の例を示します。わかりやすさを考え、まずは大胆にシンプルな計算で示します。
必要な電力を求めていきましょう。一時間あたり150Wなので、2時間で150W×2h (hour)=300Whの電力を消費します。
バッテリーの容量を決める
バッテリーは、鉛蓄電池やリチウムイオンバッテリーを使います。
鉛蓄電池の計算例
鉛蓄電池のスペック表には、5時間率容量という値が載っています。ある一定電流で5時間、電池が空っぽになるまで放電させたときの電流と時間の積が5時間率容量です。
例えば5時間率容量が50Ah (アンペアアワー)の場合、50Ah÷5h (5時間)=10A (アンペア)が試験時の出力電流ですから、容量をWh表記に直すと10A×約12V×5h=600Whです。
よって、液晶テレビが消費する300Whには十分と判断できます。
リチウムイオン電池の計算例
リチウムイオン電池を使ったポータブルバッテリーは、Wh単位の容量表示があります。必要消費電力と見比べて、可否を判断すると良いでしょう。
バッテリータイプはどれがいい?
据え置きで使い、今後もパネルやバッテリーを増やして使える家電を増やす可能性があるなら、鉛蓄電池がおすすめです。多少DIYに手間がかかっても、予算を抑えたい場合もこちらです。
屋外レジャーでパネルやバッテリーを移動する可能性があるなら、ポータブルバッテリーがおすすめです。電気のことがあまり詳しくない場合もこちらです。

鉛蓄電池はカーバッテリーとしておなじみです。充電中に水素ガスが出るので、配線時に火花を飛ばすと爆発する危険があることから、自動車整備の業界では付け外しの手順が決まっています。
しかし、ソーラーパネルの場合はこの危険はほとんどありません。
鉛蓄電池と接続するときは、ソーラーパネルを遮光して発電しない状態にしてから結線すれば安全です。
すると、端子をとりつける瞬間の瞬時電流を小さくでき、火花を飛ばすことはありません。
あまり電気がわからないので怖い方は、火花が飛んでも爆発につながらない、リチウムイオンバッテリタイプのポータブル電源を選ぶと良いでしょう。
アウトドア用のポータブル電源は、水素ガスの発生する恐れがゼロであるほか、ソーラーパネルを接続するだけの簡単さで、ソーラー充電とAC 100V、DC 12V、USB 5V出力をまかなってくれるすぐれものです。
ソーラーパネルの発電量を決める
ソーラーパネルの選定は、発電電流を基に行います。
鉛蓄電池に、液晶テレビに必要な300Wの電力をためるのに必要な電流は、充電電圧が約12Vですので 300Wh÷約12V=25Ah、よってソーラーパネルから供給したい 電流A×時間h は25Ahです。
ポータブルバッテリーに300Wの電力をためるのに必要な電流は、バッテリー側の入力電圧範囲により変わります。
仮に、入力電圧範囲が12~40Vのバッテリーだとします。この時、
- 動作電圧 17Vのソーラーパネル 一枚
入力電流は 300Wh÷17V=17.6Ah - 動作電圧 17Vのソーラーパネル 二枚を直列につなぎ、電圧34Vとして使う
入力電圧は 300Wh÷(17V×2)=8.8Ah
よってソーラーパネルから供給したい 電流A×時間h は8.8Ah~17.6Ahです。
そこで、ソーラーパネルのスペックの中で動作電流をチェックし、仮に電圧17V-電流6Aの100Wパネルなら以下のように考えます。
- 25Ahのトータル電流を稼ぐには?
例1)17V-6Aの100Wパネルを5枚使い、1時間で発電する
6A×5×1h=30Ah > 25Ah
例2)17V-6Aの100Wパネルを1枚使い、5時間で発電する
6A×5h=30Ah > 25Ah
- 8.8Ahのトータル電流を稼ぐには?
例3)34V-6Aの200Wパネルを1枚使い、1.5時間で発電する
6A×1.5h=9Ah > 8.8Ah
一日の発電時間は普通いくら?
一日の発電時間は「3時間」として計算します。一日だけで25Ahを充電するには、25Ah÷3時間=8.3アンペアの発電電流が必要です。
これをソーラーパネルの仕様にあてはめますと、DIY用で一般的な電圧17~18ボルトのパネルであれば、100Wでは少々足りず(100W÷17≒6A)、100Wを二枚(200W÷17≒12A)ならば安全な計算になります。
発電時間はなぜ3時間?
太陽光発電は、晴れ・曇り・雨・雪と様々な日射環境で動作します。一日単位でも見ても、日の出から日の入りまで、ずっとフルパワーで発電できるわけではありません。
日本の一年間の日照時間は平均で1,850時間です。365日で割ると一日当たり約5時間となります。日照時間が最も長い山梨県は2,200時間弱のため一日約6時間、最も短い秋田県は1,500時間台のため約4時間です。
朝日が昇ったばかりや夕方日が沈む前などは大して発電できませんので、割り引いて「一日3時間」として計算します。
機器を準備する
自作用のソーラーパネルには、主に単結晶シリコンタイプ、多結晶シリコンタイプがあります。
筐体はアルミフレームタイプでがっちりしたもの、フレキシブルシートタイプでやや柔軟かつ軽いものが選べます。
太陽光の変換効率の点では、今は単結晶、多結晶ともに際だった差はありません。
太陽光発電業者であれば、コスパを考えて価格と発電量をよく吟味するところですが、個人ユースでは差がないのでどちらを選んでも構わないです。
筐体の違いで、がっちりと架台を作りアングル固定するならアルミフレームタイプ、可搬性を重視するならフレキシブルタイプなどを選ぶ手もあります。
ベランダ太陽光発電の場合、吹き抜ける強風でバタバタとはためくと配線の機械寿命が縮まるので、重いですが自立できるフレームタイプが安全で好ましいです。
必要な部材は?
鉛蓄電池を使った太陽光発電のDIYに必要な部材を説明します。
まず、ソーラーパネルとチャージコントローラと鉛蓄電池は必須のアイテムです。
発電した電気で電圧100Vの家電を動かそうと思う方は、電気の直流と交流を変換するインバータが必要です。
これらを個別に最安値のところから調達すれば良いですが、部材選びに不安をお持ちの方は、ソーラー発電キットを購入すると良いです。配線やコントローラは含まれています。
また、ポータブル電源を使う場合は、ソーラーパネルとポータブル電源だけでできあがります。チャージコントローラ、インバータを別に購入する必要はありません。
50Wソーラーパネルを使い、150Wの液晶テレビを2時間動かすときの調達部材です。
- ソーラーパネル
- 自動車用バッテリー
- チャージコントローラー
- DC-ACインバーター
- 電線類
番号 | 部材 | 仕様 | 数量 | 価格(税込) |
1 | ソーラーパネル | 50W 単結晶シリコン | 1 | 7,520 |
2 | チャージコントローラー | 12V-5A | 1 | 3,000 |
3 | VCTFコード丸型 | 0.75mm2 | 必要メータ数 | ※1 |
4 | カーバッテリー | 80B24L パナソニック | 1 | ※2 |
5 | DC-ACインバーター | 12V-150W | 1 | 1,800 |
6 | 電線保護管 | φ16mm | 10m x1 | 1,000 |
7 | シガーソケット用 USB充電器 | ホワイト | 1 | 108 |
※1 家にテーブルタップが余っていればコードを再利用できる
※2 自家用車の中古鉛蓄電池を再利用してよい、新品なら15,000程度
発電システムを組み立てる

配線図を紹介します。このように接続すれば動きます。気を付けた点を下記に説明します。
チャージコントローラ、バッテリー、インバータの配線は?
表に例示したチャージコントローラは、最大負荷電流が5アンペアと低く、12V出力端子からDC-ACインバータに電流を供給するには能力不足のため、インバータへの12V配線は直に蓄電池から引き出し電流量を稼いでいます。
最大負荷が大きいか、インバータ容量が十分に小さければ、チャージコントローラの12V出力端子に接続しても構いません。
配線をバッテリーの端子に接続する時、火花が飛ぶ危険があります。火花を出さないようにするには、配線にながれる電流を小さくゼロに近づけることです。
よって、ソーラーパネルの発電をゼロにするよう、ソーラーパネルを太陽から遮ります。段ボールや新聞紙、カーペットで覆うと確実です。
配線接続の作業や蓄電池を増設するときの接続図は、以下をご確認ください。
バッテリー、チャージコントローラ、DC-ACインバータは、屋外設置としています。理由は、
壁の引込孔がないため、ソーラーパネルから引き出された太く曲がりにくい電線を窓の隙間から通せないこと、
バッテリーやコントローラを置く適当な(=邪魔にならない)場所を室内に準備できないためです。
屋外設置とはいえ、電子機器が雨風にさらされると危ないため、プラスチックケースへ収納するようにします。
AC100Vへ変換した後の電線を、窓の隙間から室内に引き込んでいます。
ソーラーパネルの設置

バルコニーに平置きで固定された、50Wソーラーパネルの例です。手すり上に置いています。
強風への備えで、フレームにあらかじめ開けられたボルト穴を使って、アングル材とボルトで固定しています。
パネルの定格が17V-3A、バッテリーの仕様が46Ahです。前半の計算を使って実力を示します。
ソーラーパネル出力 3A
ただし、チャージコントローラでの電力ロスを5%とすると、鉛蓄電池への充電電流 3A×0.95=2.85A
バッテリーへの充電時間→46Ah÷2.85A=16時間、よって満充電まで約5日強(3時間×5日)
ただし、晴天が続けばこんなに日数はかかりません。
バッテリー充電での液晶テレビ動作時間→46Ah×約12V÷150W=3.7時間となります。
ただし、鉛蓄電池は残量をカラッポにしてしまうと劣化するので、20%の残量を残して使うとすると、3.7時間×0.8=2.9時間

ソーラーパネルの設置は、太陽光を正面から受けられる30度などの斜めが望ましいと言われます。
春・夏・秋・冬の日の出から日の入りまで、刻々と変わる太陽の日射角度を考えると傾けたいのですが、その代わり、架台を設計して自作するか、傾斜を持ったところに固定する必要があります。
架台本体もどう固定するべきか、悩ましいところでしょう。
ソーラーパネルをベランダに設置するとすると、大型台風の直撃や季節の強風の予報(警報)が出ているときには、事前に下ろせるため安心です。
発電効率は犠牲になりますが、平置きして簡単に固定する方法にメリットもあります。
平置きのソーラーパネルから電線管に電線を入れて、チャージコントローラまで配線します。
日当たりが良く、バルコニー塗装も数年で薄くなるほどですので、電線を紫外線から守るために電線管を使いました。
鉛蓄電池、周辺機器の設置


100均で手に入れた大きい米ビツを雨よけとして使い、左からカーバッテリー、DC-ACインバータ、写真で見えにくいですがバッテリーの上にチャージコントローラを格納しました。蓋にアルミ箔を貼り、紫外線と温度上昇の対策をしています。
チャージコントローラへの入力はソーラーパネルからの配線、コントローラからの出力は12Vのシガーソケット用USB充電器とDC-ACインバータです。
写真には反映されていませんが、外部に露出していて電線管に入っていない部分の電線には、紫外線対策でアルミ箔を巻きます。
雨よけには、ホームセンターで入手できるコンテナボックスを使ってもかまいません。容積が大きいので置き場は必要ですが、バッテリーを増やすときには重宝します。

手元スイッチの追加
DC-ACインバータからのAC100V用電線は細く柔らかいため、窓の隙間から部屋の中まで引きこみ、コンセントをつけました。
このとき、インバータの動作スイッチも追加加工して、部屋の中までスイッチ用電線を引き込み、使うときのみ手元でOn/Offをできるようにしています。
なぜなら、インバータは直流→交流の変換を行う際に電力を消費するため、つけっぱなしにするとバッテリー充電量がじわじわ減ってしまいます。
12Vのシガーソケット用電線も部屋まで引き込み、シガーソケット用充電器(12V→5V変換)と直結しました。USBポートからスマホの充電に使えます。
できそうな気がしない方
私も、ネットの製作例をいろいろ調べても自信は持てませんでしたが、最終的にはできました。でも、途中で何回も失敗しています。
あなたにもきっとできます。と言って励ましたいところですが、失敗しそう、時間がない、と思って自作に踏み切れない気持ちも理解できます。
最近増えている自然災害への備えで、防災のために自作のソーラー発電を作りたい方。アウトドアに持っていきたい方。中にはすぐ欲しい方もいるでしょう。
でしたら、迷っているよりも、ソーラーパネルから蓄電池までそろえっている、以下のようなプラグをつなげばすぐ使えるセット品を手に入れるほうがよいです。
正直なところ、自動車用バッテリーを使って自作するのは、失敗してもそれすらを楽しめる、完全に趣味の世界です。
リチウムイオンのポータブルバッテリーと、ワンタッチで接続できるソーラーパネルのほうが、目的に合っています。
まとめ
太陽光発電システムの自作は、電気のショートに気をつけて行えば、危険な作業はほとんどありません。
電力会社からの電気とは独立した、自分だけの発電設備を持っているのは心強いです。皆さんも取り組んでみてはいかがしょうか。
以下のようなソーラー発電のスターターキットを使えば、最初の部材選びで悩まなくてもすみます。